
占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第34話「待合」
ぼくの店には、
店の扉と、防火扉のあいだに
待合スペースがある。
待合には、風を回す小さなファンの付いた照明がぶら下がっていて、
そのファンが、音もなく回っている。
ファンの下に、ベンチが二つ置かれている。
ふだんは、あまり使われないスペースだ。
ぼくは鑑定と鑑定のあいだに
よく外に出ていく。
1階のエントランスにある郵便受けを覗いたり、
外の通りを眺めに行ったり。
イギリス人みたいに、車道に向いてタバコを吸ったり。
タバコを吸わなかったり。
あんまり意味はないけど、
大切にしている手順の一つ。
そのときに、
待合にお客さんが待っていないか
いちおう見てみる。
うん。今日も誰もいない。
ぼくは扉を開け、店に戻る。
お客さんが鑑定台の前の椅子に腰かけている。
カルテの記入も終わっている。
「お待たせしました。占い、始めましょう」
いつものように、
鑑定が終わって、お店には
ぼくひとり残っている。
でも、今日は
ほかにも誰かが残っているような気がした。
予約システムを確認してみる。
予約は残っていない。
なにか、
「人」のようなものが残っている感じがするんだけどな。
扉を開けて、
待合を覗いてみる。
「あれ?」
誰もいない。
もしかしたら、これは
かくれんぼ、
のようなものなのかもしれない。
「ようし。わかったよ」
ぼくもかくれんぼしよう。
ぼくは扉をパタンと閉じた。
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