
占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第27話「オートミールを食べる」
夜遅く、ぼくは夕食を食べようと思って、
お店のソファに座って待っていた。
店内は照明を落として、
いまは、
バンカーランプの明かりだけ。
隅にあるミニキッチンでは、
電子レンジがオートミールを作っている。
機械の作動音だけが
店内に微かに響いている。
ぼくはソファの背もたれに身体を預けて、
天井を眺めていた。
窓から夜の光が反射していて、
外の通りを行く車のヘッドライトの光が
時折、天井をかすめ、過ぎ去っていく。
子どもの頃も、
ぼくはこうして、眠りに落ちるまで
天井を行き交う光を
眺めていたような気がする。
そうして、いつの間にか
眠りに落ちていった。
ここは、わたしの場所だ。
最近は、
朝はゆっくり起きることにしていて
朝食はコーヒーだけ。
お昼は、お店が始まるので、
普段から食べない。
お休みの日か、遠出したときは
食べるかもしれないけど。
でも、いつも気がつくと、
夕方になっている。
だから、最近ぼくは一日一食みたいな生活だ。
あれ? そうだったかな。
チン、と音がした。
ぼくは立ち上がって、
電子レンジからオートミールの皿を取り出し、
書き物机の上に置く。
冷蔵庫からタマゴを2つ取り出す。
オートミールの皿に割り入れて、
先割れフォークで、黄身の部分を一回ずつ刺す。
再び、皿を電子レンジに入れてダイヤルを回す。
オートミールの作り方は、
この店で暮らすようになって覚えた。
そして、右手を使う暮らしも。
チン、とふたたび音がした。
出来上がった皿を持って、ソファに戻る。
さあ、食べよう。
カチン、と音がした。
スプーンが床に落ちた音。
なんでも右手でする手順に変えたのに、
ついつい癖で、左手でスプーンを持ってしまったから。
いまのところ、
左手は握力の必要な作業には向かない。
ぼくは右手で床のスプーンを拾うと、
右手でスプーンを持った。
しばらく待った。
さあ、食べよう。
ぼくは、
オートミールを食べはじめた。





