占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第47話「約束違反」

夜。店内は照明を落として、バンカーランプの灯りだけ。

ぼくは手に入れたばかりのガラス製のゴブレットに
ウィスキーを一口分だけ注ぎいれる。

このゴブレット。
手にすばらしく馴染む。

唇に当てた感じも心地よい。
空になったゴブレットに、ウィスキーをさらに一口分注ぎいれる。

ぼくはこの手順を数回、繰り返す。

わあ、すごくいい器が手に入った。

今夜は、ウィスキーに合わせた食事をしてみよう。

棚からコンビーフの缶と薄切りのパンを取り出す。

ボールにコンビーフのかたまりを落として、
先割れスプーンでよく捏ねる。

隠し味に味の素を少しだけ。ためらいなく。

それから、スナップエンドウ、トマト
オニオンスライス、バナナ

あと、この小さめの青リンゴもいいな。

ぼくは食事を終え、
ウィスキーのビンとゴブレットを連れて
書斎に移動した。

今度はツーフィンガーを作ってみよう。

大理石製のテーブルにガラス製ゴブレットを置く。

器にウィスキーを注ぐ。
左手の人差し指を物差しに使って
量を計測すると、

ずいぶんたっぷりとした、
ツーフィンガーが完成する。

ウィスキーの入ったゴブレットを
両手で包んで、

ふつうならば

海外ドラマを2話か3話分観て、夜を過ごす。

そのあとは、

『電話帳』と呼ばれている
ペーパーバックのチェスの本を2ページほど読むか、

『捜神記』のどこでも好きなページを読む。

そのあとは、

チェスを一局だけ楽しむ。

ところがぼくは

海外ドラマの途中で、
空になったゴブレットをベッドに近いほうのテーブルに置くと
そのまま眠ってしまった。

深夜。

ぼくはベッドの上で目が覚める。
書斎のランプが消えている。

カーテン越しに夜の光が部屋の中で影を作っている。

身体に力が入らない感じがする。
部屋の隅のちいさな影と、入り口のあたりの暗がりのあたりに気配がする。

……ひさしぶりだな。さて、どっちから出てくるのかしら。

ぼくはしばらく、お化けが出てくるのを待っていた。

でも。

あれ?ぜんぜん出てこないね。

ぼくは身体を起こすと、ベランダに出た。

外は静かで心地いい。
すべての街灯がキラキラ輝いていて、すごくキレイだった。

でも、なにかが違反している。


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