
占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第21話「圏外」
その人は、若かった。
年齢よりも、肩に乗せているものが軽く見えない、そういう若さ。
「商店街の再生をやってまして」
名刺を差し出される前に、もう話は始まっていた。
町おこし。
イベント。
補助金。
人の流れ。
言葉はどれも、よく聞くものだった。
占いとしては、難しくない部類だ。
やることは見えているし、
出来ることと出来ないことの線も、はっきりしている。
「つまりですね、呼べば来るんです。
ただ、自発的に来るための導線が作れないというか」
カードを切りながら、ぼくは頷いた。
星の配置も、悪くない。流れも止まっていない。
「でも、結局これって、
こちら側の問題じゃない気がしてきて」
そこから、話が少しずつ逸れ始めた。
少子化。
過疎化。
自治体の統合。
いずれ、町は半分になる。
人は集まって暮らすしかなくなる。
「だったら、どこを残すか、
もうこちら側で決めないといけないですよね」
その言葉は、相談というより、確認に近かった。
「先生なら、どう思います?」
ああ、と思った。
これは占いじゃない。
「それはですね」
ぼくはカードから手を離した。
「じつはそれ、占い師の仕事じゃないんです」
相手は、少し驚いた顔をした。
「でも、先生は見えてるんですよね」
「見えてることと、決めることは別の手順なんです」
ぼくは静かに言った。
「それを決めるのは、あなたがたの仕事なんじゃないかな」
沈黙が落ちる。
店の外の音が、少しだけ遠くなった。
「……ですよね」
彼は、苦笑して立ち上がった。
扉が閉まる。
ぼくは、ひとりになってから、小さく息を吐いた。
「ひとつ間違えると」
誰に言うでもなく、つぶやく。
「プロセスのひとつになっちゃうだけなのに」
棚の奥に、まだ動いていない気配がある。
でも、今日は音は鳴らない。
「それからさ、言っておくけど、
あの子は呼んだって、来ないよ」
ぼくはそうつぶやいて、照明をひとつ落とした。





