占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第30話「迷子」

ときどき、
このお店で起こることなんだけど。

お店に辿り着けないお客さんが
出てきてしまうこと。

ぼくのお店は、
河原町通りにある。

といっても、

五条にあるから
たしかに、京都の繁華街から少し離れたところにあるんだけど。

京都の繁華街と言えば、
四条や、三条のあたり。

四条の交差点から、
南に15分ほど歩く。

京都では、南に向かうことを「さがる」って言う。

お店の近辺には
「安井金毘羅宮」や「三十三間堂」などがある。

弁慶と牛若丸が戦った五条大橋や、
安倍晴明の最期の地とされる場所もあって。

観光地ゾーンの中だ。

でも、
占いに来るお客さんが、
お店に辿り着けないことがある。

お客さんから、
「道に迷って、約束の時間に遅れます」

と連絡があると、
ぼくは通りに出て、お迎えすることがある。

別のお店に行ってしまったり。

近くまで来たけど、
同じ道をグルグル回り続けたり。

今回のお客さんは、

少し離れたバス停のところに
ぼんやり立っていた。

たぶん、あの人だ。

なんとなく、分かる。

「もしかして、占いのお客様ですか」

「はい。初めてで、すみません。
 道が分からなくなってしまって。
 なんで分かったんですか?」

「だって、ぼくは占い師ですから」

「すみません。お出迎えしていただいて。
 迷子になっちゃうなんて、おかしいですよね」

「いいえ。それはね、あなたのせいじゃありませんよ。
 ときどきこういうことあるんです。
 お店まで、いっしょに行きましょう」

あとほんの数十メートル。

このまま通りをまっすぐ歩いて、
右手にある建物の奥がエレベーターホールになっている。

エレベーターで3階に上がる。

「はい、着きましたよ。ここが、ぼくのお店です」

その人は、目を丸くした。

「こんなに簡単な道順なんですね」

お客を店内にご案内して、
お客さんは鑑定台の前の椅子に座る。

ぼくは鑑定台の向こうの、
いつもの椅子に腰かける。

「さあ、占い。始めましょうか」