占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第43話「改札」

踏み固められてひび割れている
乾いた土の下り道を

二人で並んで
ふもとまで降りていく。

風が吹くと、
土埃が巻き上がって空が黄色くなる。

道が狭くなっているところは
かならず、ぼくが先頭になって歩く。

この子は、いつもぼくの後ろ。

道が二人分の幅になると
いつのまにかぼくの隣につく。

この子は、いつもおもしろいな。

「あのさ、おまえは歩幅が一定だね」

「そのように訓練しました」

下り坂の道は、ゆったりカーブを描いている。
ぼくは足を止める。

この地点に立つと、

ふもとのケーブルカーの駅と
ぼくの車を停めてある広い駐車場がよく見える。

車の位置は、ここからではよく分からない。

でも、そのまわりに不揃いに立ち並ぶ商店の建物は
よく見える。

「ちょっと休憩しよう」

ぼくはちょうどいい小岩に腰を掛けて、
リュックから水筒を取り出す。

でも、この子には
休憩の概念がないみたい。

そばに立ったまま、ぼくの水分補給を見つめている。

「ねえ、これなんだと思う? 重力で作った水だよ」

あるいは、こうも言えるかもしれないね。

「これはね、地中のマグマと同じ成分の水だよ」

だから、おいしい。

「リノルナ。水はどうあろうと、水です」

ふん。そういうところが、
おまえのつまらないところだね。

まあ、いいけど。

二人で無事に坂道を下りきって、
平地に出た。

わたしは電車で帰ります、と言うあの子を
ぼくは改札まで見送った。

あの子は、
改札を通り、ホームに続く通路を曲がり消えていった。

「気をつけて帰るんだよ」

ぼくは駐車場まで歩き、車に乗り込む。

ここから街中まで、山道を下っていく。

よし。アクセルを使わないで、
エンジンブレーキを使って重力で帰ってみよう。

新緑の昼下がり。風景はキラキラして眩しい。

ぼくは山道まで車を進めると、
ギアをローに入れた。


改札は、通るためにある。

けれど、通らないままでもいい。

引き返す

通る


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