占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第42話「再訪」

遠くを眺めるように
広大な地表を見渡すと

広い牧草地のなかを
黒い点のように

ぼくの身体はゆっくりと、
黄色の牧草の地表面を移動している。

すこし目を離すと、
すっかり別の地点にいたりする。

いまは、
牧草地のいちばん端のところ。

だいぶ時間を取って、
何かを調べている。

今度は、牧草地の中心へと、
移動していく。

真ん中あたりで、
リュックを下ろして腰を掛け、

何かの包みを開いて
食事を始める。

しばらくして、
立ち上がってまた移動する。

牧草は、
ぼくの膝くらいまで伸びていて
地面はほとんど見えない。

地面はふかふかして柔らかい。
楽しいけど、歩くのにコツがいる。

風が、
ときおり牧草を揺らしていく。

「うーん。それにしても」

風は現象というよりも、

(感情)(時間)みたいに
物質として等価に扱ったほうが早いかもしれないね。

「どのあたりだったかな」

ぴったりの地点が必要なんだけど、

面倒なことにその地点は、
ときどき動いたりするんだ。

だから地道に探すしかない。

外側の、
広くて大きいほうは

たぶん「3」でいいはず。

これだけ歩き回ったんだから。

そして内側には、
小さいのに、もっと大きな数が入ることがわかった。

内側は「9」
ちょっと無理したら「11」かな。

以前、ここに
一枚多く重なった地点があった。

この近く。
こういうのはサーチでは探せない。

それはもう存在しないから。

たぶんあと、10歩くらい。

「ここか」

半歩ずれる。ここだ。

ぼくはしばらく立ったままでいる。

よかった。
少なくとも11の構成要素を超えない。

存在しないものは、
存在しない。

牧草地とぼくは、
存在しているけどね。

存在しているものは、
すべて存在しているとも言える。

でも見えないから
ぼくには分からない。

終わった。帰ろう。

「リノルナ。お迎えにあがりました」

場違いにスーツを着込んだ人物が声をかけてくる。

「今日はちゃんと検知できたと思うよ。
 ああいうのを、重力波っていうんじゃない?」

「リノルナ。そういうことは、
 わたしにだけお話しください。
 さもないと病院行きです」

それにパワーには、それぞれ強弱があります。
重力がつねに勝つわけではありません。

「ふうん。
 あ。おまえ車で来た?」

「いいえ。わたしは運転出来ません。
 歩いて帰りましょうか」


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