占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第40話「物探し」

用事を終えたぼくの身体は、
しばらく静止状態だった。

高原にあるだだっ広い牧草地の真ん中で、
ぼくは風に吹かれてたたずんでいる。

土がふかふかして、気持ちいい。

ひざ丈くらいの牧草があって、
ところどころに小さくて黄色い花が見えて、

それらが
遠く低山が連なっているあたりまで広がっている。

遠くから風が牧草に波を作りながら、
こちらにやってくる。

耳元で、風がゴウと鳴った。

ぼくは無意識にポシェットに手を突っ込んで、
おまじない用にも使う、魔法の棒みたいな
キーホルダーを取り出す。

「あれ?」

棒を持って、棒の先のリングに付けた鍵の束を
目の高さで揺らしてみた。

チリン、と鈴のような音を立てる。

「鍵が一本、少ないね」

お店の鍵、自室の鍵、防火扉の鍵、ビル自体の鍵――

どこの鍵か思い出せない鍵――

それから、銀の指輪。

うん。
なくなったのは、「用途のない鍵」だ。

「できれば、全部そろっているといいな」

よし。探してみよう。

まず右に半歩。次に10歩直進。

それから、左に4歩――

歩くと、ふかふかの地面に沈んでしまいそうで
楽しい。

手順に沿って、しばらく歩き、
身体が停止した。

「ここ? なんにもないね」

風がまた強く吹いた。

牧草が一斉に倒れて、
黄色い花が見えなくなる。

もう一度だけ、手に持った棒を揺らす。

チリン。とても小さな音。

音が風にさらわれる。

あれ? でもいまの音、足元でしたような。

ふかふかした地面を踏んだままの右足の下を
右手で探ってみた。

硬い金属の感触。

「あ。あった!」

これは<用途のない鍵>。

まあ、なくても困らないけど、
あってよかった。


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