
占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第39話「大理石のテーブル」
まずい。
と、ぼくは思った。
今日は左手だけじゃなくて、左肩まで力が入らない。
まったく大理石のテーブルなんて
ひとりで持ち上げるんじゃなかった。
大理石はすごく重い。
同じ体積のほかの物質に比べて、
3倍重いって、言われているけど。
3倍どころではなかったと思う。
家具屋で受け渡しの店員さんが
ひょいと持ち上げて、
車に載せてくれたものだから、
錯覚してしまった。
車をお店のビルの前につけて、
なんとかエレベーターに乗せて
3階に上がる。
これは自室用。
お店じゃないほうに運び入れる。
最難関は、この超重量物をひっくり返して
足を取り付けること。
説明書には
「かならず2人以上で作業してください。
できれば3人で」
と書かれていた。
やっとテーブルは完成して、
ぼくは床にへたり込む。
でも、ぼくが本当にしたいのは
ここから。
ふるえる左手で、
大理石のテーブルにランプ台を置く。
いろんな色に変化できる電球をねじ込む。
ランプフードを整える。
出来た。
ピンク色の光。紫色。シアン。赤。緑。黄色――
もちろん、白も――
「きれいだなあ」
自室のテーブルは、
これで2つになった。
夜。
痺れが首筋や腰にも回ってきたとき、
ぼくは身体を引きずって、
夜の散歩をしている。
アーケードの商店街は、
もうほぼすべてのお店が
シャッターを下ろして、閉まっている。
人のいない、シャッターだけの商店街は
ほとんど迷路みたい。
昔の人たちは、
山道で迷子になったとき、結界を解くために
煙草に火をつけた。
「そうなんだね」
と、ぼくは独り言みたいに、
つぶやいた。





