占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第36話「ルビウス」

今夜は、月に一回のデートの日。

夜になって、
ぼくと彼は、一軒家風のビストロに入り
お酒と料理を楽しんでいた。

ぼくは窓に外に視線をやった。
室内の灯りが窓ガラスに反射して、
外の様子はよくわからない。

コースはどこまで進んだかな。
指折り数える自分が窓ガラスに映っている。

前菜、パン、スープ、魚――

つぎはお肉かな。

ぼくは彼のほうに顔を向けた。

「・・・じゃあここで、きみの好きな『捜神記』を例にとってみようか。
 広く東アジアの怪異譚において、霊的存在が赤い衣を着用しているパターンはほんとうに多いんだ。
 日本で言うなら、幽霊は白い衣を着ているね。あれと同じ。
 古代中国ではお化けも神の使者も赤い衣を着ている。」

「へえ、赤い衣。
 どうしてきみは、その話をぼくにするの?」

「きみがこういう話を好きかな、と思って。
 違うのかい?」

「べつに、好きでもないよ」

「古代中国では、赤は知性、美しさ、煌めきを表わす。
 お化けもそのカテゴリーだったんだよ」

「そうなんだ」

ぼくは手に持ったワイングラスを、軽く彼のほうに向けて、

「じゃ、この赤ワインもそういう意味?」

「赤ワインは文明圏がちがうね。
 ヨーロッパでは赤は、闘争、決断、交渉決裂、かな?」

「占いでは、
 そういうのを『ルビウス』って言ったりする」

「ルビウスか。ラテン語だね。この概念を援用するならば、
 たしかに古代中国とヨーロッパのそれぞれの定義を包含できる」

「うん。便利なコトバでしょ?」

テーブルにお肉がやってきた。

そして、デザート。

それから食後のフレンチ・コーヒーを楽しむ。

「リノルナ。これからぼくのお気に入りのバーに行こう。
 ここから目と鼻の先なんだ」

行こう。うん。今日は楽しい。