(その3へ)

その日のうちに神社の神主さんから祖母に電話が行きました。母が鳥居に石を投げたことへの苦情です。

祖母が母とリノルナを部屋に呼びました。いったい何をしたのか、母とぼくからそれぞれ話を聞いて、この件を判断するためです。

神社にはただ二人で散歩に行ったこと。神社の鳥居は母にとって昔から占いの場所だったこと。鳥居の上に石を載せるおまじないはとても真面目で大切であること。つい子どもの頃を思い出して、子どもの頃に戻りたくて、今日ひさしぶりにやってみたこと。

ふだんから子どもっぽいところのある母が、いま祖母の前で本当に子どもみたいになっていくのが分かりました。祖母に口答えをして、大泣きして、大声で叫びました。お母さんはいつも姉の肩ばかり持つ! リノルナはお母さんに神社に連れていってもらえた! わたしは連れていってもらったことなんか一度もないのに!

母の感情が、ぼくの中に流れ込んできます。ぼくは母の発するすさまじいパワーが恐ろしくて、思わず両手で耳を塞ぎました。鷲尾山のご加護によってぼくの視覚がブロックされていなかったら、なにかを見たかもしれません。

感情は霊的な波動と等しく、また感情は幽界に通じます。だから霊的な攻撃力を持つし、幽界から霊的なものを呼び寄せる通路にもなります。

畳の上でなにかがパラパラ、ポツポツと音を立てました。ぼくの左手首に巻かれていた霊的防御用の「観音様のお数珠」が弾けて、珠が畳に落ちたのです。次いでぼくは意識を失って、畳の上に崩れ落ちました。

仏間に敷かれた布団の上で、ぼくは目を覚ましました。ぼくは布団の上で身を起こします。障子のガラス窓から日が差し込んでいるので、それほど時間は経っていないみたい。

ぼくはふと、お化けを感知しました。場所は障子窓の向こうの縁側になっている廊下の奥の、上のほう。このパワーの感じは、この間から祖母の部屋でごそごそ畳を這いずっていたアイツだと思います。あんなところにいるんだ。大きな蜘蛛みたいだ。

そしてこの感じは、さきほど母から感じたパワーにとてもよく似ていることに気がつきました。実際ほとんど瓜二つな感じがします。あの蜘蛛みたいなやつ、お母さんなのかしら。

布団の上でそんなことをぼんやり考えていると突然、ぼくの脳裏になにかがひらめきました。そして両腕を後ろから鷲掴みにされたみたいに、体がロックされ自由が利かなくなりました。ぼくの体になにかが降りてきたのです。

(お水とお菓子が要る)

仏壇にお供えするみたいに、コップに入ったお水と小皿にのせたお菓子。お水とお菓子を使って、ぼくはあの蜘蛛みたいなやつを屠(ほふ)り去ることが出来る。そんなイメージがぼくの頭の中に浮かびました。

<カチン>

ぼくの背後で聞き覚えのある音がしました。

ぼくの後ろに強いパワーを感じます。この感じは知っています。この感じは人形部屋の赤い着物のあの子です。

(その5へ)