占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第51話「ワンウェイドア」


占い師は、不動産屋に嫌われる。
占い師のほうでも、不動産屋は苦手だ。

だって、変な物件をつかまされやすいから。
でも、ぼくは不動産屋から「鍵」を手に入れた。

だから、
ぼくはいつ内見に行ってもいいわけ。

紹介されたのは、宴会場みたいだった。

正面のガラス張りのエントランスの鍵は開かない。
ぼくはウサギ人形を左手にくぐらせてみた。

「おまえそれ、勝手口の鍵じゃねえのか。おまえ、客のつもりかよ」

建物の裏手に回ると、ドアが一つある。
鍵が開いた。

ぼくは、ウサギ人形を左手から外して、
垣根の上にそっと寝かせておく。

中に入る。

ここは更衣室みたいだな。

細い廊下を進むと、
厨房があった。

あ。
この壁、動く。

すごいな。シークレットドアだ。
ロビーに出た。

螺旋階段がある。

二階に上がってみる。
大宴会場だ。

椅子が隅にうず高く重ねられている。

なぜか中央に、事務机と椅子が一脚。

ぼくは事務机の前に座ってみた。
なんか、面接でもするみたいだな。

この二階だけ借りてみてもいいかもしれない。

一階に降りる。

お客様用の廊下を歩いても、
ふつうに厨房に行けるようになっている。

ぼくは最初の更衣室まで戻ってきた。
内見はこれで終わり。

あれ?ドアのノブがついてないな。

ノブのついていてほしい箇所には、
真鍮製の四角いプレートが貼り付けてある。

入るとき、引いて開けたから
押したら開くかな。

だめか。

細い廊下の向こう端の
厨房のあたりで、カチッとかすかな音がする。

「リノルナ。お迎えに上がりました」

ドアの向こうから、くぐもった声が聞こえた。

「ああ。おまえ、そっちからドア開けられる?
 ぼくのほうはノブがないんだよ」

「リノルナ。ドアを開けましたが、
 あなたがおりませんが」

「ふーん。そうか」

「リノルナ。あの子が来ます」

廊下の向こう端で
<カチン>と音が響いた。

ぼくは排気口を見上げた。
あの排気口、ぼくは通れないかな。

あれ?なんか書いてあるね。

*入門不還*
*渦来*
――kinoscu

排気口の奥から、コツン、ポツンと
かすかに水滴みたいな音がする。

「ねえ、外は雨降ってる?」
「リノルナ。こちらでは雨は降っておりません」

そうか。
お化けでも呼んだほうがましかもしれないな。

ぼくは折り畳まれた言葉を
引っ張り出す作業をはじめた。

まことの呼び魂、まことの呼び魂よ、
呼びなお──、内より呼びなお呼びよ、


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