占い師リノルナの事件簿@京都ほしよみ堂第44話「44cm」

44cmだった。
たぶん、標準型だと思う。

ひびが入っていたことは、
なんとなく知っていた。

でも、あんな硬い構造体が
こうも見事に、真っ二つに割れるなんて。

お店のトイレの、

便座のこと。

発見したときは、
すごくびっくりした。

最後に座った人に、
怪我はなかったのかしら。

サーチしてみても、なんの痕跡もなくて
よく分からない。

お店には、何重にも結界を張っているから
いつもすっきりキレイなものだ。

ぼくはトイレスペースにしゃがみ込んで、
割れた便座を見つめる。

「うん。寿命だね、これは」

交換しよう。

ぼくはお店の扉の札を「CLOSED」にした。

今日はもう「臨時休業」

便座を取り外して、
ひとまずトイレの壁に立てかけておく。

まず、測量だ。

便座よりも
便器側のデータを集めたほうがいいような気がする。

安定しているし。

たしか巻き尺がどこかにあったな。
あれ? それとも、なかったんだっけ。

結局、巻き尺は見つからなかった。

ぼくは書き物机の上にあった
物差しを手にした。

これは、
いちどきに15cmの距離を測ることが出来る。

さあ。では物差しを便器に適用しよう。

なんか、このボルト差し込み穴の間隔が
本質のような気がする。

穴の中心から、
もう一つの穴の中心までの距離。

「14cmか」

便器のうち、
長い部分と短い部分がある。

長いのと短いのの計測は、15cmの物差しでは、
ちょっとした手順がいるね。

長いほうは、44cmくらいかな。
短いほうは、30cmくらいの気がする。

データが揃った。

つぎは行動。
手順を続けよう。

車を出して、
ホームセンターに行く。

店員さんに便座の売り場をたずねて、
連れて行ってもらう。

「ウォシュレットでも、温熱便座でもないんですね?
 普通便座、売り場にあったかな。」

「お店用なんですけど、トイレに電源がないんです」

あった。一種類だけ。

手に取ってみる。「標準・大型汎用タイプ」と書いてある。

箱を裏返して、説明書きを読む。

そうか。
取付穴はかならず14cm。規格で決まっているんだね。

買ってきて、さっそく取り付けた。

便器はベージュで、便座はホワイトの
変なトイレが出来上がった。

そうか。

「色は考慮しなかったな」

まあ、いいか。
座れるし。

カバーをオレンジ、紫、黄色みたいにして
もっと前衛的にしてみてもいいかもね。


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