(2/3からのつづき)

「先生。わたしはどんな仕事をすれば上手くいきますか、どのような仕事を選べばいいですか」

「専門知識を誰かに授ける仕事はいかがですか」

「教師は、わたしには向いていません。管理的なものは、なにもかも」

そうか。そうなると彼女には、専門性を極限まで尖らせる、研究職が向いていそうかな。

ただし彼女がその分野に踏みいると伝統的な価値観を破壊することを伴うので、周囲との軋轢(あつれき)が出来てしまうかも。

「研究職なんていかがですか。大変なこともありますけど、歴史的な大発見をして、歴史に名を残すことになるかもしれませんよ。そのためには、あなたの生まれた場所から、うんと離れてください。海外で仕事をしたほうがいいです」

彼女、ここでぼくに身の上話を聞かせてくれました。

彼女はじつは中国では有能な漢方医として病院に勤務していたこと。

それが人間関係のストレスで、30歳で職場を辞し、フィリピンで3年間ボランティア活動に従事したこと。

現地では建築作業などを手伝っていたこと。

キリスト教の関係者と縁が出来て、その人から数秘術を教わったこと。

それから、いったんは中国に帰国したけど、すぐに11日間の日程で京都観光に出かけることにした。

そして今日、三十三間堂で観音様を見て泣いて、いまぼくの目の前に座っているというわけ。

「先生。わたし、この旅行を終えたら、今度はアフリカに行こうと思っています。アフリカで外交官の彼と結婚することになるんですね。子どもを二人産んで。仕事もそこでしたらいいのですか」

「そうです。アフリカは十分に遠いので、かなりの業績を残せるでしょう、漢方医学の研究者としてね」

「先生。わたしとわたしの両親の関係を聞かせてください」

「ホロスコープでは、両親との関係を直接見ることはできないけれど、きっと上手く行ってはいないのでしょうね。ご両親は、あなたのことを理解できないと思いますよ」

彼女は、とても激しい気性をしていて、進取性があり、未知のものに対して価値を感じることが出来る。

反面、決してそれを自分のものにはしない。人にその価値を教えるだけ。

でも人々が彼女に追いついた頃には、彼女の関心はもうほかに移っている。

すごく飽き性でもある。彼女を理解するのは、きっと大変骨の折れることだろう。

「そのとおりです。先生。最後に、総合的に、アストロラーベの中でお話しいただけることがあれば教えてください」

「あなたは星の力に強く束縛されている部分があるんです。人を助ける使命と言ったらいいかな。ちょうどいましがたあなたの心を揺さぶった三十三間堂の観音様の使命のように、あなたもまた人々を救い続けるように定められているんです」

彼女のホロスコープからは、彼女が人々に介入して、地道に、一人も取りこぼさずに高みへと導く宿命を帯びていることが読みとれる。

「でも、先生。わたし飽きっぽいんですよ」

と彼女は笑って、元気になった様子を見せた。すこし顔色もよくなったみたい。

「たぶん、そのためにあなたは子どもを得て、パワーを上げる。アフリカにも行く。あなたにとって必要なのは子どもで、結婚はどちらでもいいことなのかもしれないですね」

「先生。中国には『天命』という考え方があるんです。それは人知の及ばないことで、誰にも理解できないことで、人が動かされることがあるということなのですが。天の意思に従って。先生は、そうおっしゃるのですね」

「天命。まさにそうです」

彼女は、満足して帰って行きました。たっぷり2時間かけてホロスコープを読み解いたわけです。

雨降りの日に、ゆったりと占いを楽しむ。これは京都ならでは。リノルナならでは、といったところでしょうかね。

(了)