リノルナは、自分の性的指向が【両性愛】とオープンにしているのですが、それは初対面の人に絶対にカミングアウトする、ということではないんですよ。

LGBTQのカテゴリー分けを援用すると、じつは誰でもカテゴライズが可能。いわゆる『普通の男性』だって、分類できてしまうのです。

「はじめまして。今日からこの部署に配属になりました○○です。ぼくはシスジェンダーの男性で、ヘテロセクシャルです(*1)。みなさん、よろしくお願いします」

*1 性自認と性表現が一致している男性で、異性愛者です。の意。

なんてね。え、なんでそんなこと言うの? よろしくって、なにを? やりまくりたいってこと? なんかやっぱりおかしいですよね、初対面の挨拶で、こんなこと言うのって。というか、言う必要ないですよ。

でもぼくの場合は、「ぼくはバイセクシャルです」という必要がある場面が、めぐってくるわけなのです。悲しいことですよ。

バイセクシャルですってカミングアウトしたときに、ぼくが相手に理解してほしいなと期待しているのは、

「ぼくの目から見える世界は、男女二元論の世界とはぜんぜん違って見える」ということ。

大雑把に言えば、ぼくは男女を分けて考えることが出来ないのです(*2)。だから恋に落ちた相手が、はたして男か、女かということには、とくに理由はなくて、その時々の結果にすぎないのです。ただ好きになっただけなのですから。

*2 厳密には、女はこういうタイプが好き、男はこういうタイプが好き、と区別がなんとなくある気がするので、この説明では不完全なのですけど。

異性愛者の人にカミングアウトすると、性交渉のバリエーションのことを告白されたと取られることがあるんです。とくに性欲強めの人だと、自分に置き換えて考えてくださいますから。

「え、じゃ、おまえ、つねに3Pじゃないと気がすまないわけ?」

と、当時カミングアウトした年上の男性に、半ば羨望の眼差しで言われたことあります。3Pってなんなのか。ここでは説明しませんけど、十代後半の当時のぼくは、当然のように知らなかったわけですよ、そんなセックスの仕方があるなんてね。

後日、その年上の彼から電話が掛かってきたのです。「準備ができたから、おまえのその3Pやってみせてくれよ。興味あるから。男は俺でいいやろ」と彼は息を弾ませて、大変嬉しそうにおっしゃるのです。

「女はな、風俗店の女がおまえに興味持ってるから。おまえ、いま大阪か? いまから京都の○○まで出てこいよ」

もうどこから、つっこんでいいのか、わかりません。彼を信じてカミングアウトしたのに。まさか彼はぼくのことを、その方に話してしまったということなのでしょうか。いまなら『アウティング』といって完全にアウト事案。

それよりも『3Pやってみせて』って何?

ぼくは、お別れも言わずに、すぐに受話器を置きました。ショックで、身体中が冷たくなっていくのが分かりました。

実際、気持ちが落ち着くのに何年もかかったような気がします。

バイセクシャルって、つねに男と女の恋人が同時にいないと性衝動が抑えられない人って意味ではないんですよ(*3)。そこだけは、わかってほしいかな。

*3 でもバイセクシャルだって人間だから、なかにはそういう人もいるでしょうね。それを否定するわけではないですよ。